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続々・樹の散歩道
  ゴヨウマツの「松の実」も悪くない
  ついでにハイマツの「松の実」も試食


 先に別項(こちらを参照)で取り上げたチョウセンゴヨウの樹群付近にはゴヨウマツ(ヒメコマツ)の変種とされるキタゴヨウも植栽されていて、樹下にはチョウセンゴヨウに比べれば随分小振りとなるが、やはりエビ天状態の球果の残骸が多数見られた。多分、種子自体の大きさもチョウセンゴヨウよりはるかに小さいはずである。エゾリス君は、これもしっかり食べているようであり、そうであれば、是非、当方としても試食してみなければならない。【2025.12】 


 キタゴヨウの球果の様子   
     
 
    キタゴヨウの成熟前の球果(8月上旬)
 学名上はゴヨウマツの変種となっている。
 Pinus parviflora var. pentaphylla
     キタゴヨウの成熟球果(9月下旬)
 球果の表面はヤニが多い。 
   
      エゾリスの餌食となった球果の残骸
 エゾリスにとってはキタゴヨウの種子はいい食べ物となっているようである。球果から種子を取り出すため、球果の鱗片(種鱗)がすべて剥ぎ取られて周囲に散らかっている。
     種子を放出した後の球果(11月中旬)
 雪をのせた状態であるが、鱗片が完全に乾燥して、大きく開いている。 
 
     
   エゾリスがキタゴヨウを貯食する場合は、球果自体がそれほど大ききくないためか、球果のままを埋設するのだという。一方、シマリスは種子をほお袋に入れ運搬するのだという。
また、キタゴヨウの種子については複数種の鳥が採食することが知られている。実際に、キタゴヨウの球果を付けた梢端にスズメよりも小振りの鳥が群れているのを確認した。 
 
     
 キタゴヨウの種子の様子   
     
 
            キタゴヨウの球果
 鱗片は乾燥が進むと、次第に開いてくる。
   乾燥して鱗片を開いた球果と種子
  開ききった鱗片の間から登場した種子である。
   
          キタゴヨウの種子
 しっかりした翼があるが、ゴヨウマツの種子では翼は非常に小さい。 
         キタゴヨウの種子
 翼を剥ぎ取った状態である。 
 
     
 キタゴヨウの松の実を食する   
     
 
   
左:比較用のチョウセンゴヨウの実 
中央:キタゴヨウの実 右:比較用の米粒
           キタゴヨウの実
 種皮を剥がすには、相応の努力を要する。 
 
     
   当方はリスのような器用さはないが、まずは中の胚乳を痛めないように道具を使って種皮(外種皮)を割る必要がある。ところが、チョウセンゴヨウの場合に使用したラジオペンチでは刃の裏側の空間が大き過ぎて合わない。そこで保有する一回り小さいペンチを使ったところ、これが幸いにしてピッタリであった。

 薄皮(内種皮)むきも次第に熟練し、ごくわずかな量でもあることから少々我慢して黙々と進めた。作業をしつつ、この大きさでは商品としての生産は考えにくいことがよくわかった。
肝心なキタゴヨウの松の実の味に関してであるが、これは安心のふつうの松の実の味であることを確認した。

 ところで、キタゴヨウの種子にはチョウセンゴヨウとは違って翼が付いている。アカマツやクロマツに比べたら、その種子ははるかに大きいからやや意外であるが、翼があるということは、種子散布は実質的に動物散布と風散布の併用型ということなのであろう。 
 
     
  <参考:キタゴヨウの雄花と雌花>   
     
   
       キタゴヨウの雄花(6月中旬)
   花粉が放出されている。
        キタゴヨウの雌花(6月中旬)
 よく見ると花粉があちこちに付着しているが、受粉部位は種鱗の基部にあって外からは見えない。。
 
 
 ハイマツの松の実を食する  
 
 この際、ついでなので、ハイマツの実についても試食することとした。  
 
 
   
 ハイマツの雄花(6月上旬) ハイマツの雌花(6月上旬) 
 
 
   ハイマツの成熟前の球果(7月下旬)
 マツ科マツ属の匍匐性の常緑低木。
 Pinus pumila
  ハイマツの成熟球果(7月下旬)
 上方の小さな球果は本年産のもので、来年成熟する。 
 ハイマツの成熟球果(8月上旬)
  鱗片は乾燥しても大きく開かない。
 
 
 ハイマツは地を這う樹形であるから、アカマツやクロマツのようにタネを風で飛ばすような条件にないため、種子には翼がないし、球果は大きく開くこともない。

 種子はホシガラスが球果をもぎ取って運ぶことによって散布されるのだという。種子は食べられつつも運んでもらう必要があるから、球果が小さい割りには種子は大きめなのであろう。そうはいっても、種子はキタゴヨウよりもさらに小さいから、手で種皮を割り、薄皮をはがして食べるのは容易でない。このため、ごく少量の体験にとどめた。

 種皮を割るのに適合した道具がないから、小さなペンチで、力を微妙に調製しながらの作業をすることになった。種子が小さい分だけ種皮も薄いが、さて、鳥はどうやって食べているのであろうか。他人事(鳥事?)ながら、心配になる。
 
 
 
      ハイマツの種子
 鱗片の一つを下に引き下ろした状態で、2つ並んだ種子が顔を見せている。
       ハイマツの種子
 キタゴヨウの種子よりもひとまわり小さく、翼がない!!。 
      ハイマツの実
 種皮を剥ぎ取った状態である。
 
 
 さて、ハイマツの松の実の味であるが、やはり安心のふつうの松の実の味であった。
 仮に、ハイマツの実が袋に一杯入った製品があったら、その手間を考えると、とてつもなく高額のものとなることは間違いない。

 さて、キタゴヨウの実もハイマツの実も試食したわけであるが、むき実とするにはあまりにも小さくて疲れるし、腹の足しとする量の確保も困難であることをしみじみと感じた次第である。二度とこんなアホなことをすることもなかろう。
 
 
<参考:ハイマツ種子の胚乳の中の胚の様子>  
 
 
   種子内では、芽生え時に姿を見せることになるかわいい子葉が、胚乳の中で一丁前に形成されている。 
           ハイマツ種子の胚